退職交渉のことは転職活動をはじめる前から考える。

若手の人材不足と転職者が増えている為か、
20代や30代が転職先を決めて退職を申し出た際、
退職交渉が難航することが増えているようです。

特に、国内系大手の伝統的な企業で
その傾向がみられます。
欠員を補充しようと中途採用に力を入れても、
なかなか抜けた社員と同等レベルの
優秀な方を採用できず苦労しています。

<あの手この手の退職引き止め>

そうなると、残った人にしわ寄せがいきますし、
上司は自分の上席や経営陣につめられる訳です。
仕事に支障が出て、自分の評価にも影響するならば、
それは当然、必死で引き留めようとするでしょう。

「希望の部署に異動させてあげる。」
「やりたい仕事ができるように配慮すると約束する。」
「すぐに昇給させるよ。」
・・・などなど、空約束手形も含めて、何でもありで
説得しようとすることもよく目にします。

世話になった上司に引き止められたり、
または、今の上司には不満があっても、
信頼する別の人(元上司)などから、
説得されれば心も揺れるもの。

申し訳ないと言う気持ちもあり、
人に迷惑を掛けてはいけないという
心の声も聞こえてくるでしょう。

<損をするのは自分だけ>

ただ、情にほだされて、現職に残ったけれども、
最終的に後悔することの方が多いものです。

約束が守られなかった。
異動できたが、翌年に地方に飛ばされた。
(地方に行けば転職しづらくなる為)
人事評価でマイナスがついて、
将来の昇進に影響する、などなど。

組織は甘くはありません。
個人の為に動いてくれるのではなく、
組織の為に動くのです。
また、約束が違うと主張しても、
会社が上司と部下のどちらの味方になるかと言えば、
上司の味方になります。

そして、転職しようと退職を言い出して
それを翻意した個人だけが損をします。
シビアな現実です。

<退職交渉は、転職活動を始める前から考える>

ですので、退職を言い出した後に、
説得されて撤回するというダサいことは
避けましょう。

その為には、転職先が決まってから
はじめて退職のことを考えるのではなく、
転職活動を始めるときから考えておくことです。

「欠員補充に苦労するだろから、
退職意志表示は退職日の〇日前には行おう」

「仕事の引継ぎを迅速にする為には、
業務のマニュアルを用意しておこう」

「退職交渉が難航するだろうから、
こういう戦略で交渉を進めよう」

などなど、早めに考えておきます。

これは転職先との話し合いでも有効で、
オファー受諾後、入社までに何日必要か
目途がついていれば入社予定日を明確に伝えられます。
入社までに少し日数が必要そうであれば、
早い段階で入社時期を相談できます。

ちなみに私が作成した退職交渉マニュアルでは、
退職を申し出る前に、自らの考えを振り返り、
転職する覚悟をあらためて明確にすることを
お勧めしていますが、
こんなことは内定を受諾する前、
転職活動を始める前に行っているべきことです。

転職活動は、学生時の就活とは違って、
内定を取ることだけが目標ではありません。
その後、退職交渉をまとめるということも
とても重要な(かつ大変な)取り組みです。

社会人であれば、
また、プロのビジネスマンであれば、
内定を得ることだけを考えるのではなくて、
退職をまとめてすっきりと次に移れるよう
準備をしておきましょう。

それが結果として、転職先からも、
退職する会社の人々からも、
中長期的な信頼を得ることになるでしょう。

(2019年5月20日)
1級キャリアコンサルティング技能士
山本恵亮
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・参考コラム:
退職交渉が難航した時の対処法

・お役立ちツール:
退職交渉マニュアル