奨学金返済の資金を会社が無利子で社員に貸し付ける制度について。

先日の日経新聞でSMBC日興証券が
新卒作用する社員の奨学金返済用の資金を
無利子で貸し付けることにしたという報道がありました。

コロナ禍で多くの学生が経済的に困窮して
多額の奨学金(実質は高い利子の学生ローン)を
背負っていることが社会問題になっているので、
記事を読んだ時、SMBC日興証券の制度は
社会情勢に合った取り組みだと思いました。

<転職をやりにくくなる>

そして、これについて複数の人々と会話したところ、
別の見方もありました。
証券会社をはじめ大手企業勤務の若手社会人から
お聞きした意見で多かったことは、
「転職をやりにくくなる」というものでした。

会社から無利子でお金を借りると、
会社に縛られてしまって辞めることが出来なくなる
という意見です。
この様な制度は借りている社員が返済前に辞める場合、
一括して返済しないといけないものです。
そうすると実質新卒入社後、数年間は転職出来ない
という状況になってしまいます。

確かに、会社側からすると新卒社員の早期退職防止
の為の制度にも見えます。
借りる方から見れば、ただより怖いものはありません。

社員側の自由が制約されるという見方も納得です。
本来、会社と労働者は相互に合意して労働契約を交わしますが、
借金の返済資金を無利子で受け取ると労働者の立場が弱く、
会社の立場が強くなってしまいます。
確かにこれは労働市場においてはバランスが悪いかも知れません。

大手企業に採用されるような学生はスキルや能力が高く、
会社にしがみつかなくても転職出来るという自信があります。
実際、それは可能だと思います。
そうすると会社が無利子で…というと身構えますよね。

他方、経済的に困窮している学生は多く、
また、それを救うような制度はありません。
残念ながら、自分の力で稼げ、何とかしろ、
というのが今の日本社会です。
そんな中で返済資金を無利子で貸してくれる制度は
その点に関しては有難いでしょう。

<どうすればいいのか>

で、どうすればいいのか。
会社側として何をするのがフェアなのか。

一つは給料を上げることでしょう。
または、入社一時金(サインアップボーナス)を支払う
という手もあります。

転職ではよく行われているのですが、
この人はぜひ採用したい!という時には、
自社の採用オファーを受け入れてもらう為に、
「入社してくれたら〇〇〇万円支払う」という
入社一時金というボーナスがあります。

上述のSMBC日興証券が採用する学生を支援する為に
無利子融資制度を行うのであれば、
それよりも、例えば、該当する学生に入社時に一時金を
支払うという方がフェアかも知れません。

学生は助かる、会社は採用したい人を採用できる、
この労働契約の取引においては、
入社後に労働者が縛られる契約よりもフェアと思います。

→ 上述のSMBC日興証券は、来年度をめどに
「返済不要の奨学金支援給付金も創設」する計画だそうです。

ま、そもそも、学生の奨学金の問題はテーマとしては
高等教育の問題ですので、民間が肩代わりするのではなく、
国が取り組むべきことですが。

皆さんはどう思いますか?
1つの正しい答えはないと思いますが、
学生の経済問題は、皆で知恵を絞って行動すべき社会問題ではないでしょうか。

(2021年3月15日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士
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