プロの働きざま:博物館スタッフの仕事

博物館の職員の働きざまに触れて、
感動する機会がありました。

地方空港のある大きな町から、
特急列車で山間を1時間半走り抜けて
到着した街にある小さな市営博物館。

江戸時代にその地を治めた大名家の
文化財を展示しています。

私は歴史好きなので、
当地を訪れたら寄ってみようと思っていたものの、
正直なところ大きな期待はしていませんでした。

ですが、期待をはるかに超える素晴らしい
博物館でした。
なにしろ職員の方々の仕事ぶりが素敵なのです。
地味だけれども、専門的でホスピタリティある働きぶりです。

<来館者への気づかい>

まず、入館してすぐの玄関ホールにて。
おもちゃの鎧が隅っこに置かれています。
当然(?)それを着て写真を撮ろうとしていると、
さりげなく男性のベテラン職員が出てこられて
「こちらの家紋の前でお撮りしましょうか?」
と優しく声をかけて下さいました。

そして、私が大きな荷物を持っているのをみて、
「事務所でお預かりしましょう。」
とのお気遣い。

身軽になって、なんか良い気分で展示コーナーへ。

<タイムスリップしたような展示>

展示物は、派手なものはありません。
その時は展示のテーマが「お姫様」だったので、
お姫様用の大きな輿が置かれていて、
着物、楽器、和歌や物語の本(ノート?)といった
大名家の教養的な生活の様子がうかがえる
展示がされていました。

2Fに上がると、婚礼の調度品や衣装、
昔のひな人形や、人形用のミニ食器(リアル!)など。
細かい物がとても多いのです。

面白いのは、それらの発注を受けた業者のノート。
細かく筆で書かれていて、ページの端には小見出しや
付箋がついています。
そのノートを見ながら、丁寧に調度品を用意していた
仕事ぶりが脳裏に浮かびます。

このようにお姫様をテーマにして、
その日常や婚礼、ひな祭りなどの行事に関わるもの、
それらを行う裏方の仕事が見える帳面や帳簿など、
派手ではないけれど滅多に見ることができない
展示物でした。

まるで1つの物語のようで、お姫様を切り口に、
その時代を垣間見た気持ちになる素敵な展示でした。

職員の方々が専門家と一緒に、
よく考えて展示をしておられることが、
ひしひしと伝わってきました。

<仕事に織り込まれたリサーチ>

深い満足感を持って玄関ホールに戻ると、
小さなボードが置かれていて、
そこには都道府県別のグラフがあって、
訪問者の県名のところに丸シールを張るように
なっていました。
わたしも、神奈川県のところにシールを張りました。

そういえば、入館時の職員さんとの雑談で、
「何処から来たの?」「どうやってきた?」と
聞かれたのを思い出しました。

これらもきっと、ちょっとしたリサーチなのでしょう。
展示物がとてもよく考えられていたことを見ても、
ここの博物館は仕事をまじめにやるだけでなく、
来館者の視点をよく考えて仕事をしておられるのだと感じました。

<プロの仕事ぶり>

来館者を温かく迎え入れるおもてなしの対応、
専門的なポイントを踏まえてよく考えられた展示、
普段の仕事の中に織り込まれた顧客理解のリサーチと、
小さな博物館だけれども、
プロの仕事ぶりに接することができる場所でした。

ちなみに、この博物館は、愛媛県の宇和島にある
市立伊達博物館です。

真剣な仕事ぶりは、お客さんを感動させるのだと
改めて実感することができる素晴らしい機会でした。

(2019年4月1日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士
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