士の道から、現代のプロのあるべき姿を見る。

日本には歴史上では武士がいて、
現代の職業には弁護士、会計士、税理士
など「士」がつく職業がありますね。

武士道という言葉がありますが、
石田梅岩が「都鄙問答」で
孟子の士道についての言葉を引用して、
士の道について述べています。

<士道とは何か?>
梅岩は「士の道は、何をおいても、
まず心を知って志を決めることだ。」と
述べています。

そして、孟子(尽心章句上三三)の
下記の箇所を引用して説明しています。

***
王子、塾(てん):
「先生、士たるものは、何を心がけたらよいのですか。」

孟子:
「志を高尚にすることです。」

塾(てん):
「志を高尚にするとは、どういうことですか?」

孟子:
「いつも仁義に志しさえすればよいのです。
(中略)
常に身を置く所はどこかといえば、
それはただ仁なのです。

常にふみ行く路はどれかといえば、
それはただ義なのです。」

(孟子・下、岩波文庫)
***

儒教における仁と義が述べられていますが、
それらは簡単に言えば、
仁とは「他者を大切にすること」で、
義とは「正しい行い」(道徳や倫理にかなっている)
ということです。

そうすると、士は
「他者を大切にし、正しい行いをすることに徹する」
という高尚な志を持て、ということでしょう。

<現代の士はどうあるべきか>

梅岩は、武士の中にも
「武芸に励んでさえ励んでいれば良い」と
勘違いしている者が多く、
それら志のない者は士(サムライ)の中に
入れるべきではない、と述べています。
厳しいですね。

現代の士は、仕業の人々だけでなく、
プロとして働く我々一人ひとりも含まれるでしょう。

どれだけ才能があっても、
仁義が欠けていれば
(=人を大切にせず、正しいことをしない)、
他にどんな取り柄があったとしても
士ではない。

一方で、仁義に徹する生き方をしているならば、
ほかに少々不足があっても士と呼べる、
と述べられています。
もちろん、少々の不足を埋めるための
努力をすることは大前提ですが。

「人を大切に、正しいことをする」志を持ち、
その上で、
それぞれの職業における技能を習得し、
能力を積み上げていくことが、
現代の士(=プロ)の道ではないのかな、
と私は解釈しました。

なんか、おじいちゃんのお話みたいになりましたね(笑)

(2020年9月28日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士
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<参考図書>
石田梅岩『都鄙問答』 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ14)

<参考ツール>
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