「シリコンバレーで起きている本当のこと」
(宮地ゆう 著)では、
ITベンチャーが続々と生まれている
シリコンバレーはアメリカンドリームが
実現される夢の場所という姿だけでなく、
凄まじい格差が生み出されている状況を
リアルに描いています。
高給取りのスペシャリストが集まる陰で、
家賃が上昇してもともと住んでいた人達が
賃貸可能な住宅が不足していることや、
低所得の人々が家を借りることが出来ず
ホームレスになっている、ことなど。
冬の夜は24時間巡回バスがホームレスの
人々が寒さをしのぐ為のホテル代わりに
なっている、というエピソードなどが
紹介されています。
徹底した資本主義による自由競争社会の
行き着く先の光と影を垣間見ることが
出来る臨場感ある内容の本でした。
私も米国に住み仕事をしていたことが
あるので、この本で述べられている
ことが皮膚感覚で分かります。
病気をしたり、怪我をしたりして
働けなくなったら、職を失って一気に
ホームレスになってしまう
恐怖と隣り合わせ・・・という感じです。
この本は米国の社会問題を描いて
いますが、読後感としては、
そこに書かれている様子は日本の
近い将来像を表しているかも、
と感じてしまいます。
すでに現在の日本の状況も、
6人に1人が貧困であることや
相対的貧困率で日本は米国次いで4位
であることなど、既にお世辞にも
豊かな社会とは言えない状況に
陥っているのですが、
私は人の職に関わる仕事をしているので、
それがリアルに見えてしまいます。
学歴と入社可能な会社の相関と
その後の収入格差、
会社毎の給与水準の差、
職種毎の収入の差、など
米国ほどではありませんが、日本でも
ビジネスパーソンの間で賃金格差が
広がっているのを感じます。
この傾向が10年20年続いてしまったら、
と考えると恐ろしいですね。
昔と違って年功で収入が上がるという
ことは随分と減ってきていますので、
自ら自己投資して、スキルを磨いて
収入を上げるしかありません。
でも、一方では、それすら行う余裕が
金銭的にも、時間的にも無いという
状況にある人々もあり、その結果、
収入を上げられず、その場に固定される
ということも増えています。
(20代~30代の非正規社員の増加と、
正社員への転換が難しいことなどは、
その一側面です。)
ほんと「ルポ シリコンバレーで起きている本当のこと」と
似たことが起きる社会にならないよう祈りますが、
祈っていても仕方が無いので、
厳しい産業社会を上手く泳ぎ回る知恵を
身につけたいものです。
(2016年11月21日 山本恵亮)
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