新型コロナの脅威で仕事にも影響が出た人も、
働き方が変わってきた人も多いでしょう。
感染症に襲われた街を描いた小説の中では
社会はどうなったのか、人はどう動いたのか、
この先どうなるのかを知るヒントが欲しくて、
名著、カミュの「ペスト」を読みました。
ペスト(新潮文庫)
<ペストに描かれている街の様子>
ペストという感染症の見えない脅威に襲われる
人々の心理や行動、生々しい現実などが
リアルに描かれている深い小説でした。
例えば、小説の前半に描かれている
ペストが蔓延し始めた初期段階の状況は
1,2週間前の東京に似ています。
ちょうど街が閉鎖されたばかりの時期の
市民の様子が下記の様に描かれています。
***
この見慣れない光景にもかかわらず、
市民たちは明らかに彼らの身に起こったことを
容易に理解しかねていた。
別離とか恐怖というような共通の感情はあったが、
しかし人々はまた依然として個人的な関心事を
第一列に置いていた。
誰もまだ病疫を真実には認めていなかったのである。
大部分の者は、彼らの習慣を妨げたり、
あるいは彼らの利益を冒すことがらに対して、
特に敏感であった。
***
少し前、または今の東京(4月上旬)の
人々の様子に似ていると思いませんか?
小説ではこの後、恐ろしい勢いでペストが蔓延し、
感染者とその家族は隔離されて、
とても苦しみながら人々が死んでいきます。
血清を投与しても、苦しむ時間が増えるだけで、
結局は死んでいく子供の姿は悲惨でした。
<医師リウーの働きざま>
私は、その中に描かれている医師リウーの
働きざまに感銘を受けました。
死んでいくペスト患者の治療に淡々と取り組む
医師のリウーに対して、
たまたま出張で街に来ていて帰れなくなった
新聞記者が「ヒーローを気取ったりしないで、
あきらめるべきだ」との趣旨で言い立てて
自分は愛する妻に会う為に、街から脱走をすると言います。
それに対して、医師リウーはこう言います。
***
「(略)今度のことは、
ヒロイズムなどという問題ではないんです。
これは誠実さの問題なんです。(略)
ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです。」
***
そして、「誠実とは、どういうことだ?」と
問う新聞記者に対して、
***
「僕の場合には、つまり自分の職務を果たすこと
だと心得ています。」
***
と答えて、仕事に戻ります。
因みに、この後、医師リウーの妻は何百キロも
離れた療養所にいることが、リウーの同僚から
新聞記者に伝えられます。
<今の東京で我々はどう働くか>
医師リウーの仕事と、
我々一人ひとりの仕事は異なります。
しかし、我々は皆、例え小さくても
社会の中で必要な役割を担っています。
感染を広げない為に責任ある行動を取りつつ、
あれこれと不安になったり、
コロナが収束した後のことを想像するばかりでなく、
今、ここでの自らの職務、役割を果たすことを
淡々とやっていきたいものです。
(2020年4月13日)
1級キャリアコンサルティング技能士
山本恵亮
プロフィール
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<推薦図書>
ペスト(新潮文庫)
<参考コラム>
すさまじい収入格差が広がっている日本<2回:格差を引き起こす習慣の違い>
すさまじい収入格差が広がっている日本<1回:平均年収と準・富裕層の年収水準>
新型コロナウィルスの中途採用への影響(採用中止など)。 4/1時点
<参考ツール>
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